ART SCRAMBLE アートスクランブル

MUSE

南館せせらぎテラス

2025年3月18日(火)〜2026年3月上旬

時間は決して止まることがない。それは川のように都市の風景を変え、記憶を上書きし、新たなリズムを刻み続ける。笹岡由梨子の最新作 《MUSE》 では、彼女自身が時計の針となり、文字通り時間のメカニズムに組み込まれ、大阪の脈動する空間の中に自らの身体を刻み込む。この都市は過去の移民、労働、そして野心によって形作られ、同時に未来の舞台でもある。数十年ごとに新たな万博の姿へと変貌する場所、それが大阪だ。

笹岡は、1970年の大阪万博が象徴した未来への希望を振り返りつつ、それが今ではユートピア的な未来像のノスタルジックな記憶へと変わったことを示す。同時に、彼女は2025年6月に中央公会堂で開催される万博プロジェクトに向けて、ポーランドに何度も滞在する中で触れたマリー・キュリーの存在にインスパイアされた新たな作品を準備している。どちらのプロジェクトにも共通するテーマは「移動」であり、それは単なる物理的な移動にとどまらず、記憶や思想、未来へのビジョンの流動性をも示唆している。

大阪、ワルシャワ、香港、それらは笹岡の芸術的旅の拠点ではあるが、彼女にとって重要なのは場所そのものではなく、その場所が残す記憶の痕跡である。《MUSE》は、時間だけでなく、都市空間と個人の記憶がどのように絡み合い、私たちのアイデンティティを形成するのかを探る試みでもある。彼女自身の身体を時計のリズムに重ね、モザイクで表現された母の顔を配置し、数十年前の大阪のノスタルジーと現在の都市のアイデンティティを交錯させることで、笹岡は過去と未来をつなぐ架け橋を作り出す。

この作品は「変化」と「持続」の両方を描き出す。場所そのものよりも、そこに刻まれた記憶こそが強く残り続けること、そして旅とは単なる移動ではなく、自身と世界を深く理解するための手段であることを、観る者に問いかける作品である。

Text: Paweł Pachciarek

歌: 池田真己
録音: 西村千津子
テキスト:
構造計算: 株式会社タンデム
設計・施工: たま製作所 | 小西由悟・岩山夏己 ・木綿要介
マネジメント: 古谷晃一郎
制作協力:
栗原悠次、小井帆乃実、小島麗美、原こころ、諸岡あゆみ、LIU JING、京都芸術大学 ULTRA PROJECT | 荒井美桜、諌山遥香、岡田友梨、須賀鈴之助、利倉杏奈、新海有紗、丸山和夏、京都芸術大学 ULTRA FACTORY | 浦田沙緒音・大島拓郎・大脇理智・佐々井菜摘・佐々木大空・徳山詳太郎・福田直樹
協力: 竹林鋼機株式会社、Twelve Inc.

アーティスト

笹岡 由梨子

Yuriko Sasaoka

大阪府出身。映像の中にある絵画との接点を探るべく、絵画における手の痕跡や筆致と近似した、高性能な CG 映像にはない異物感や違和感を引き出し、独自のストーリーを紡ぐ。そして、緻密な構成や物語とともに、どこか懐かしい、けれど誰も見たことのない独特の世界観をリアルに感じさせる。 また、2017年に参加した北マケドニア共和国でのアーティスト・イン・レジデンスで人の温かさ、心の豊かさにカルチャーショックを覚え、以降はアジアに最も近いヨーロッパ世界のリアルな人々、暮らし、歴史に関心を深め、中央・東欧諸国のリサーチや発表を重ねている。 現在、関西/香港を拠点に活動。

https://www.phdgroup.art/artists/sasaoka-yuriko

OSAKA

うめきた広場大階段

2025年3月18日(火)〜2025年6月末

4月から『EXPO2025大阪・関西万博』が開催されます。国外や県外から多くの方達が大阪に来られる機会だと思いますので、大阪の玄関口である大阪駅からの大階段に『OSAKA』の文字をメインにした作品を制作しました。文字の中には日本らしさと華やかさを感じてもらえるように伝統的な日本画の花を描きました。

アーティスト

MOYA

岡山県生まれ。学生時代に出会ったストリートアートに影響を受け、ライブペイント、壁画制作の活動を開始。《ストリートアート×和》をテーマにした表現に取り組んでいる。ライブペイントでは、SUMMER SONIC、METROCK等、日本最大級の音楽フェスにてパフォーマンスを披露するなど多数のイベントに出演。国内外での壁画制作も精力的に行なっている。

https://www.instagram.com/moya_mk16/

のほほん

うめきた広場

2025年3月18日(火)〜2025年6月末

幼い頃、私は恐竜に夢中でした。
20年以上経った今、再び当時読んでいた恐竜図鑑を開けると、その魅力に再び吸い込まれました。人は大人になるに連れ、子供の頃夢中になっていた物や、その感覚を忘れていってしまいがちです。そんな私に、子供の頃の真っ直ぐな根拠の無い愛を再び教えてくれたのが恐竜達です。 それは言葉に言い表せないロマンで、大人になっても子供の様に何かに夢中になる事はとても大切な事だと気付かされました。 私はそれを再解釈し、今の自分を取り巻くスケートボードや、音楽、ファッションなどのストリートカルチャーと融合させるため、アイコンである"丸坊主くん"というキャラとコラージュ感覚で一つの画面に収めることにしました。
普段生活の中でなかなかアートに触れられない方々にも、本作品を見て"のほほん"とした穏やかでハッピーな気持ちになってもらえると幸いです。

アーティスト

Tim Kojima

絵描き。1994年、兵庫県出身。10代の頃、アメリカ西海岸のスケートカルチャーに影響を受け作品制作を始める。京都精華大学デザイン学部在学中、サンフランシスコのCalifornia College of the Artsに留学。現在は、滋賀県琵琶湖湖畔に拠点を置きながら、国内外での壁画制作やクライアントワーク、個展などを精力的に行っている。

https://www.instagram.com/tim_kojima/

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